腫瘍と免疫
今日、腫瘍の治療・予防を行う上において、宿主抵抗を増強あるいは回復させることは、医学上重要な意義があるとされ、とくに癌については、免疫学的研究が積極的に進められている。
動物や人で認められているように、癌は体細胞の変異で生じ、癌細胞には宿主の細胞と違った抗原すなわち腫瘍特異抗原が存在するとされています。
動物の腫瘍の移植実験で、腫瘍細胞の増殖は、宿主の免疫能により左右されるといわれています。すなわち、免疫能の低い新生子やヌードマウス(胸腺がないため、細胞性抗体の産生能に欠ける)では、成熟動物で移植できない腫瘍細胞の移植が可能であり、またEhrlich癌も成熟マウスより、免疫能の低い老齢マウスのほうが腫瘍細胞の増殖速度が速いことが知られている。
他の動物実験で、腫瘍ウイルスや発癌物質は、それ自体、免疫抑制作用をもっているため、腫瘍の増殖を高めるとし、また臓器移植に用いられる抗リンパ球血清やアザチオプリン(免疫抑制剤)の投与も発癌率を高めるといわれている。
腫瘍と免疫の関係において、今日もっとも注目されているのは、宿主の免疫応答力で、いわゆる細胞性免疫やマクロファージの示す、免疫応答にもとづく宿主抵抗の問題です。
ここで免疫療法の点について述べると、癌特異抗原を免疫原とした特異的免疫療法と、それ以外の物質たとえばBCGやコリネバクテリウムなどの微生物や菌体成分を利用した非特異的免疫療法を挙げることができる。
そして人の癌の治療に、これはかなり用いられるようになってきたが、未知の分野が多く、たとえば宿主抵抗増強、すなわち効果の上からみても限界があり、また種々の副作用についても問題がのこされています。
また、免疫増強剤としてレバミゾールが用いられていることがありますが、今後この種の免疫療法は、外科的療法や化学療法および放射線療法とうまく組み合わせて慎重に進めていくべきであるといわれています。
嚢腫(嚢胞)Cyst
嚢腫(嚢胞)とは、なかに流動性または半流動性の内容を蔵し、被膜によって、ほぼ完全に包まれた嚢状物です。被膜の内面に上皮を有するものは真性嚢腫といい、その他のものは偽性嚢腫という(外傷性の血液嚢胞、腫瘍の軟化嚢胞など)。
嚢胞は先天性または後天性に発生し、体表や体腔、その他各所に限局性に存在します。一般に慢性の経過をたどり、適切な外科的処置によって全治するものが少なくない。
先天性嚢腫(congenital cyst)
犬に多発する。真皮の内側に密着する小結節で、徐々に大きくなる。切開すると内容は灰色でやや乾燥した小顆粒の集団。壁は扁平上皮からなり、皮膚付属器は存在しない。手術によって摘出する。
類上皮嚢腫と同様の嚢腫で、ただその壁に皮膚付属器(毛包、脂腺、汗腺など)が含まれる。内容はケラチン性、油脂状です。
ヨード欠乏地帯に生まれる子羊、子山羊、子犬に生じ、ヨード剤給与が奏効する。しかし原因不明のことがある。後天性にも発する。
豚および牛において先天性に存在することがある。
尿膜管の閉鎖不全の結果形成される。
後天性嚢腫(acquired cyst)
既存のあるいは病的に形成された腔胞内に滲出物が貯留したもので、陰嚢水腫(hydrocele)、ヘルニア嚢腫(cystic hernia)、粘液嚢炎(bursitis)、腱鞘炎(tendovaginitis)の際にみられる。
腺排泄管あるいは中空臓器の排泄障害によって分泌物の貯留、管腔の拡張をきたしたもので、粉瘤(atheroma or sebaceous cyst)、ガマ腫(ranula)、唾液腺嚢腫(salivary cyst)、乳腺嚢腫(galactocele)、精液瘤(spermatocele)、その他、膵、肝、甲状腺、下垂体などにも発生する。
牛、馬の卵巣に発生する濾胞嚢腫(follicular cyst)、黄体嚢腫(lutein cyst)は、ホルモン失調にもとづく一種の貯留性嚢胞です。