カリウムの体内動態
哺乳動物の体内には平均で50mEq/kg程度のK⁺がありますが、全体の98%以上が細胞内に存在し、細胞外液中には3.5~5mEq/lしか含まれていない。
K⁺は①細胞膜の静止電位を維持し、また②細胞内浸透圧を外液より高く保つ役割を演じている。
飼料中のK⁺は小腸から吸収される。消化管内と細胞外液との間には常にK⁺の出入がありますが、小腸では吸収側に傾き、大腸では分泌側に傾いている。
消化管にはK⁺の体内恒常性維持機構が乏しく、飼料中のK⁺が多ければ吸収量も多くなる。
体内恒常性維持は主として腎での尿排泄に頼っている。草食動物では大腸での分泌量も多い。また腎障害では大腸での分泌量が増加する。
腎では糸球体で濾過された分が近位尿細管で再吸収されてしまうので、尿中排泄は専ら遠位尿細管と集合管における分泌に頼っている。
この分泌では①アルドステロン量が多くなると尿細管細胞内のK⁺濃度が高くなるので分泌量が多くなる。②Na⁺の再吸収が多くなれば管腔内の電位が低くなるので分泌が多くなる。
また、③尿量が多くなっても多くなる。
元来、細胞には内部のK⁺濃度を高く保つ性格がある。この性格に影響を与える要因がいくつか知られています。①アシドーシスになると細胞から外液への移行が促進され、逆にアルカローシスでは細胞内への移行が促進される。
②インスリンはK⁺の細胞内への移動を促進する。
細胞外液のK⁺濃度が高まるとインスリンの分泌が高くなるので、この機構は恒常性維持機構の一部であると考えられている。
低カリウム血症(hypokalemia)
血漿中のK⁺が3.5mEq/dl以下の状態でも細胞内のK⁺は正常であることもあるが、低カリウム血症では一般に細胞内のK⁺が出て静止電位が下がり、分極が大きくなる。
この影響を強くうけるのは横紋筋です。
①アルカローシスとか②高張ブドウ糖液注射によるインスリン分泌増加が原因になって血漿中のK⁺が細胞内に流入して低カリウム血症になる。
①食欲不振によるK摂取低下や②嘔吐や下痢によるK⁺の喪失、③薬物などによるK⁺の尿排泄の増加が原因になる。
なお、代謝性アシドーシスとか血尿症では体内K⁺が欠乏するが低カリウム血症にはならない。
症状と治療
骨格筋の収縮不全と心拍不整が主徴であり、重症では筋や心筋に組織病理変化が起る。
腎では髄質の浸透圧が下がって尿の濃縮能力が低下する。
まずK塩を投与し、さらにカリウム保持性利尿薬を投与する。
アシドーシスの併発例にはクエン酸カリウムが両方の症状の治療を兼ねて用いられる。
高カリウム血症(hyperkalemia)
血漿中のK⁺濃度が5.5mEq/l以上の状態です。高カリウム血症では細胞内のKが増加して静止電位が上がり、分極が小さくなる。
この影響を強く受けるのは横紋筋ですが、心筋への影響が強いので危険です。
①アシドーシス、②外液浸透圧の急上昇、③インスリン分泌の不足が原因になる。家畜の下痢症で高カリウム血症になるのはアシドーシスが原因であり、体内のKは寧ろ不足気味になる。
飼料中のKの過剰摂取や溶血が原因になる。
腎不全や薬物が原因になる。
症状と治療
①骨格筋の収縮力が低下する。②心では伝導ブロックとか心室細動の可能性もあり、高カリウム血症が緊急治療を要する危険な病態である理由になっている。
アルカリ化薬(NaHCO₃)、高張グルコース液、インスリンなどの投与によってK⁺の細胞内取込みを促進する。
またループ利尿薬を投与して尿排泄を促進する。

