血液の平均pHは7.4で、許容変動範囲は±0.1以下に保たれている。血液の緩衝系では炭酸・重炭酸塩系が最も重要な役割を演じている。
この系は一般にHenderson-Hasselbalch式で表されている。
pH=pKa+log$\frac{(BHCO₃)}{(H₂CO₃)}$=6.1+log$\frac{(BHCO₃)}{(a・pCO)}$
但し、BはNaかKである。(BHCO₃)/(H₂CO₃)の比は健康動物では20:1(27mEq/1.35mEq)であるからpHを算出すると7.4になる。
体内では代謝によって常に大量の酸が形成されている。その大半はCO₂の型になって肺から呼出されるが、残部は腎からH⁺として排泄される。
酸塩基平衡の異常にはアシドーシスとアルカローシスとがあります。
呼吸性アシドーシス
呼吸が抑制されて肺におけるガス交換が減退すると、血液中のH₂CO₃(炭酸ガス分圧)が上昇するので呼吸性アシドーシスになる。
臨床的には中枢神経抑制がみられる。
重症では昏睡状態(CO₂ coma)になる。
呼吸性アルカローシス
アスピリン中毒などでの呼吸興奮では逆に血中のH₂CO₃が減少してアルカローシスになる。
臨床的には中枢興奮で、腱反射の異常興奮に始まり痙攣にまで到る。
代謝性アシドーシス
下痢が発症すると多量のNa⁺が排泄され、また代謝異常とか筋の異常興奮によって大量の有機酸が血中に出てNa⁺を消費するのでアシドーシスになる。
臨床的には呼吸速迫や中枢神経系の抑制が認められる。
代謝性アルカローシス
嘔吐によって胃液の塩酸が失われてアルカローシスになる。
臨床的には呼吸抑制と中枢興奮がみられ、重症では痙攣する。
一般にアシドーシスは発症頻度の高い症状ですが、体内の代償機構も強い。アルカローシスの発症頻度は低いが、代償機能が弱いので危険です。
アシドーシス、アルカローシスの代償反応
酸塩基平衡の異常に対しては3種類の平衡維持機構が作動する。
これらの代償機構は健康状態に於ても体液の酸塩基平衡維持のために作動している。
呼吸による代償
アシドーシスに対しては呼吸促進によってCO₂の呼出を促進し、アルカローシスに対しては呼吸抑制によって体液内のCO₂濃度を高める。
この代償反応は代謝性のアシドーシス、アルカローシスだけにしか作動できないが、反応が速やかで数分以内に代償できる。
細胞性代償
体内のNa⁺の50%は細胞外液にありますが、40%以上が骨に存在し、その半分が可動性です。
K⁺の殆どは細胞内にある。
アシドーシスでは体液中に増加したH⁺が骨のNa⁺や細胞のK⁺と交換して細胞内に入る。
アルカローシスでは逆に細胞内のH⁺が外液のNa⁺、K⁺と交換する。また、筋肉内の乳酸カリウムが乳酸として細胞外に出るが、この反応も細胞外液のH⁺を増加させる。
細胞性代償反応には数時間が必要です。
腎による代償
尿のpHは主として燐酸緩衝系に支配されているので、4.0から9.0までの変動が可能です。このpH制御は主にH⁺の分泌機構によっている。
これらの機構は、主として集合管で作動する。
腎による代償反応は緩徐であり、数時間から数日間かかる。
アシドーシスではH⁺の分泌を促進し、Na₂HPO₄(リン酸水素二ナトリウム)を酸性のNaH₂PO₄(リン酸二水素ナトリウム)に変える。アルカローシスに対してはH⁺を分泌しなくなる。このために尿中には塩基性のNa₂HPO₄(リン酸水素二ナトリウム)が排泄される。
遠位尿細管には濾過されたNaHCO₃の約10%が到達する。
平常時やアシドーシスではこのNaHCO₃が吸収されて代りにH⁺が分泌されるが、この時に作られるCO₂(二酸化炭素)は再吸収されてH₂CO₃(炭酸)になり、さらにNaHCO₃(炭酸水素ナトリウム)になって血中に入る。
アルカローシスではこの機構が作動せずにNaHCO₃がそのまま尿中に出る。
一般には血中のNaHCO₃が22mEq/l以上になるとその濃度に応じて尿中に排泄される。
アンモニアは尿細管壁で作られ、H⁺を伴って分泌されてNH₄⁺になり、代わりにNa⁺が再吸収される。
この機構もアシドーシスによって促進される。
集合管内は間質液より電位が低く細胞内電位に近いが、Na⁺が吸収されて細胞内電位が上昇することがK⁺分泌の必要条件です。
Na-K交換は1:1の交換ではなく、Kイオン1個の分泌にはNaイオンを数個から20個程度も吸収する必要がある。
従って、K⁺の分泌には多量のNa⁺の吸収が必要になり、間接的にNa⁺・H⁺交換が抑制される。この結果、血中のK⁺濃度が高くなってK⁺分泌が多くなればH⁺分泌が少なくなり、尿のpHは上昇する。

