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キシラジン(xylazine) ~ 鎮静催眠作用とともに筋弛緩作用と鎮痛作用とを持つ動物専用薬

キシラジン 中枢神経系
鎮静催眠薬(sedatives and hypnotics)

 
鎮静作用とは動物の自発運動を低下させる作用であり、催眠とは動物を睡眠させる作用です。
 
 
下記の薬物は小用量で鎮静作用を、高用量で催眠作用を示すが、さらに用量を上げても麻酔状態(強い刺激によっても覚醒しない状態)にはならない。
 
 
人体用医薬品での鎮静・催眠薬は催眠の目的に用いられる薬物が多く、またベンゾジアゼピン系薬物が代表的薬物になっている。
 
 
動物用では鎮静か麻酔補助の目的に用い、催眠には殆ど用いない。
 
 

キシラジン(xylazine)

 
 
キシラジンは鎮静催眠作用とともに筋弛緩作用と鎮痛作用とを持つ動物専用薬です。
 
 
鎮静作用が最も強く、筋弛緩作用がこれに次ぐが鎮痛作用は弱い。
 
 
牛は高感受性ですが、犬猫や馬も感受性があって使用可能です。
 
 

体内動態

 
 
脂質バリア通過性のよい薬物ですが、経口投与では分解されるので使用できない。
 
 
筋注または静注すると組織分布性がよく、また脳に高濃度に分布するために分布容が大きい。
 
 

薬理作用

 
 

犬猫

犬や猫に1mg/kgを静注すると2~3分で強い鎮静状態になり、次いで眼瞼下垂や開脚のような筋弛緩作用が認められる。

鎮痛作用も認められるが、軀体部に強く四肢部では弱い。

この状態が数十分間にわたって継続する。

鎮静用量より高い用量を用いれば横臥して眠るが、外部からの刺激によって起き上がる。

さらに用量を高くしても麻酔状態にはならない。

鎮痛作用の強さはモルヒネと同一と評価されていますが、モルヒネのような全身にわたる均一な効果は認められない。

筋弛緩作用は中枢性で、中枢神経内の介在ニューロンに働くといわれいている。

猫では投与直後に嘔吐が高頻度に現れるが、犬では頻度が猫より低い。迷走神経性の徐脈・不整脈が著明であるから必ずアトロピンを投与してから用いる。

 

馬での用量と作用は犬に類似するが、鎮静と筋弛緩だけで鎮痛作用は期待できない。

 

反芻動物は特に高感受性で、犬に対する用量の1/10で強い鎮静・筋弛緩・鎮痛が得られる。

 
 
豚に対しては中枢興奮作用を示す。
 
 

作用機序

 
 
α₂作動性によって働くと考えられており、キシラジンによる犬の反応の全てがα₂遮断薬であるヨヒンビンの小用量によって消失する
 
 
化学構造が他のα₂作動薬のクロニジンと類似している。
 
 
脳脊髄におけるα₂受容体の分布は広く、クロニジンは脳幹青斑のα₂受容体に特異的に作用するが、キシラジンは脳内のα₂受容体の全体に作用すると説明されている。
 
 
牛での拮抗薬としてはヨヒンビンが無効であり、トラゾリンを用いる。
 
 

臨床応用

 
 
犬猫ではキシラジンとアトロピンとの併用によって簡単な臨床処置が可能です。吸入麻酔、バルビツレート、ケタミン麻酔での前投与薬として用いると麻酔薬の用量が半減する。
 
 
馬での臨床応用も犬と同様ですが、他の麻酔薬との併用は副作用が発現し易い。
 
 
過量投与に対する拮抗薬としてはヨヒンビンの注射剤を用いる。
 
 
牛では全身麻酔が危険であり、また他に安全で有効な鎮静薬が少ないので繁用される。
 
 
アトロピンで前処置するとキシラジンと局所麻酔薬との併用によって帝王切開程度までの手術が可能です。また牛に対する鎮痛効果が確認された薬物はキシラジンとブトルファノールだけです。
 
 
キシラジン注射薬を子牛の仙骨後部から脊髄硬膜外に注入すると、15分後から約1時間にわたって外陰部の痛覚が失われる。
 
 
キシラジンには局所麻酔作用がないので、脳脊髄液に吸収されてから脊髄に浸透して作用すると考えられている。
 
 
フィードロットで多数の子牛を去勢する場合に先ず全頭にキシラジンを硬膜外に注入してから、順次に去勢する様な方法に用いる。
 
 
キシラジンは反芻類や馬属の野生動物に対する不動化薬として有効性と安全性が高い。
 
 

類似薬物

 
 
メデトミジン(medetomizine)がキシラジンと同じ目的に主として犬猫に用いられています。
 
 
また拮抗薬としてアチパメゾール(atipamezole)がある。
 
 
このふたつの薬物はα₂受容体への選択性が特に高い。

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