医薬品のエーテルはジエチルエーテル(diethyl ether)です。無色の液体で、低比重(0.6)で沸点が低い(35℃)。その蒸気は引火性です。
エーテル蒸気は空気より重く(2.56倍)、床や卓を覆うので、引火の危険が大きい。
水への溶解度は約8%(25℃)で、血清には11%溶ける。
貯蔵中に光線と空気中の酸素によってアセトアルデヒドと過酸化物を生ずる。後者は刺激性が強いので、吸気に混入すると肺炎や気管支炎の原因になる。
麻酔薬としての作用
エーテルは麻酔とともに適切な筋弛緩、低反射、鎮痛の得られる理想的麻酔薬ですが、麻酔力はかなり弱く、導入に要する時間も長い。
犬では導入に13%以上の濃度が必要で、この濃度は開放系では得られず、閉鎖系でも特別の気化器を用いなけらばならない。
呼吸器に対する作用
気道粘膜に対する刺激性が強く、このため導入期に反射性に呼吸を促進する。
また気管支粘膜の分泌亢進作用が強く、術後肺炎の原因になる。
したがってエーテル麻酔ではアトロピンの前投与が必要です。
循環器に対する作用
心拍出量を約20%低下させ、また麻酔深度が深くなれば血圧を低下させる。
しかし循環器に対する作用はハロタンより弱い。
肝・腎に対する作用
1時間程度の麻酔による影響は軽微です。
この程度の麻酔によっても肝グリコーゲンは約50%低下する。
尿量が減少することがあるが、下垂体からの抗利尿ホルモンの分泌を促進するためです。
消化管に対する作用
消化管平滑筋の緊張と運動に対する抑制作用はかなり強く、麻酔期には完全に麻痺させる。
麻酔回復期に嘔吐(術後嘔吐)することがあるが、適切な前投与薬によって予防できる。
エーテル麻酔では血液濃縮、過血糖、非蛋白窒素濃度上昇が認められる。
麻酔薬としての評価
エーテルは適切な前投与薬を併用すれば安全で、深度を制御し易い麻酔薬です。
酸素または酸素・亜酸化窒素と混合して用いれば全ての幼弱動物や小動物の麻酔に適している。
エーテル・酸素・亜酸化窒素の混合物には爆発性があるはずであるとの主張が使用を躊躇させる原因です。

