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吸入麻酔薬(inhalation anesthetics)の共通的性格

吸入麻酔薬 中枢神経系

 
 
●全身麻酔薬(general anesthetics)
 
 
全身麻酔はその投与によって①意識の喪失、②痛覚の喪失、③筋弛緩、④低反射性が可逆的に得られる薬物です。このような麻酔状態は外科手術に必要であり、一般に吸入麻酔によってほぼ達せられる。
 
 
手術の種類によっては麻酔の条件のすべてを備えていることが必ずしも必要でないし、不完全な麻酔だけしか得られない薬物ではそれだけ麻酔事故が少なくなる。
 
 
一部の注射用麻酔薬はこのような目的に用いられる。
 
 

麻酔の段階(stage of anesthesia)

 
 
吸入麻酔薬を動物に吸入させると動物の反応が一定の順序に従って進行する。この順序を麻酔の段階といい、一般にエーテルを例にとって説明される。
 
 

Ⅰ導入期:自発性発揚期(stage of voluntary excitement)
 
 
施術から逃れようとする運動興奮(もがき)と運動協調性の失調(よろめき)が特色です。

興奮による速脈、不規則呼吸、瞳孔散大がみられ、また排尿・脱糞することもある。この期では意識が失われないが、後半では鎮痛が認められる。

 

Ⅱ発揚期(stage of excitement

この期では意識と自発運動性が失われますが、運動支配系における上部中枢の抑制によって筋運動は活発になる。呼吸は不規則で瞳孔は極度に散大する

馬ではこの期の後期から軽麻酔期にかけて激しい眼球振が起こるが、他の動物では認められない。犬猫ではこの期の後期に嘔吐することがある

発揚期はエーテル麻酔では明確ですが、汎用麻酔薬であるハロタンとかペントバルビタールによる麻酔では極めて軽度に経過する。

 

Ⅲ麻酔期(stage of surgical anesthesia

Ⅱ期(発揚期)を経過すると突然、動物が催眠状態になり、呼吸が深く規則的になり、心拍も強くなる。

この時期から麻酔期に入るが、臨床症状によって4期に分ける。

 

麻酔Ⅰ期

軽麻酔期であり、反射の多くが残っている。この期の麻酔でも筋弛緩薬とか鎮痛薬との併用によって大手術が可能です。

このような麻酔法を軽麻酔法という。

 

麻酔2・3期

外科麻酔期で、大型の手術に好適です。2期では一部の反射、特に腹膜反射が残るので、腹腔内の手術では3期の麻酔が必要です。

筋弛緩や鎮痛は十分である

 

麻酔4期

この時期では呼吸が浅くなり腹式だけになる。

瞳孔は極度に散大し、粘膜の血流も少なくなる。

この段階の麻酔は危険であり、使用しない。

 

Ⅳ中毒期:延髄麻痺期(stage of medullary paralysis)

呼吸がチェーンストーク呼吸になり、血圧はショック状態になる。

粘膜はチアノーゼになる。

 
 

脳波による麻酔段階の分類

 
 
多くの麻酔薬で麻酔段階を検討してみると、実用性の高い麻酔薬には、エーテルのような定型的な段階を示す薬物は少ない。
 
 
例えば、ハロタンではⅡ期が事実上ないし、エンフルランでは筋がクローヌス状態になる。Winterは多くの麻酔薬の猫に対する麻酔効果と脳波とを比較して新しい麻酔の段階を提案している。
 
 

麻酔深度の判定

 
 
全身麻酔では麻酔を一定の段階まで進行させ、その深度を必要な時間だけ保持する。このためには麻酔深度を判定する指標が必要ですが、全ての麻酔薬について信頼できる指標は呼吸だけです。
 
 
馬では眼球振もよい指標になる。
 
 
その他の指標は麻酔薬の種類によって、また動物の状態や麻酔前投与薬の使用によってかなり変動する。脳波は健康動物の麻酔深度にはよい指標ですが、病的動物では信頼性に乏しい。

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