ミカドキジ Mikado Pheasant

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ミカドキジ
ミカドキジ


ミカド雉は台湾の高山にだけしかいない鳥ですが、台湾には尚他にも2種の雉がいます。


即ちサンケイと台湾雉(リングネック)ですが、此の後2者は平地、或いは比較的山の低い所にいるのに対し、ミカド雉は阿里山の2,500m位の高所にしかおらず、何時も高いところに居るというので、外人は日本の天皇の名を此の鳥に与えたのでありましょう。


英国の探鳥家Walter Goodfellowは1906年に台湾に来たり、阿里山の高所に分け入り、土人の頭飾りに付けていた2本の中央尾羽に注目し、土人の案内で此の鳥を発見したのですが、此れは台湾という島が支那人によって発見されてから、実に1300年後の事であったのです。


この時、グッドフェロー氏は此の2本の尾羽を土人から買い取っただけでしたが、生鳥が欧州へ初めてもたらされたのは、1912年に前記のグッドフェローが8羽の雄と3羽の雌を台湾で捕獲して、英国のジョンストン夫人に送った時です。


ジョンストン夫人は此の鳥は緑餌が主食であることを発見し、又多数の雛をとる事にも成功しました。


ミカド雉という名前を与えたのは前記のフッドフェローの2本の中央尾羽を受け取ったオグリビーグラント氏だったのですし、又ミカド雉の最初の研究をした人が此のグラント氏だったのですが、其の後より精細な研究がなされ、英国の鳥学雑誌Ibis及び飼鳥雑誌Avicultural magazine等に多数の論文が発表され、Beefが1922年に又其の後1951年にはDelacourが此の新発見のミカド雉は支那の尾長雉、カラヤマドリ及び我が国のヤマドリ等と同じシルマチクスに属するものと判定がなされました。


我国では黒田長札博士が1916年に台湾へ行き、此の鳥を蕃童等に罠を仕掛けさせて捕獲し、標本を作り、又生鳥を持ち帰り、ミカド雉の繁殖に日本で初めて成功しました。


又単に捕獲だけならば、前記のグッドフェローの発見と同年、即ち1906年の11月に台北博物館の菊池米太郎氏によって捕獲されています。


ミカド雉の雄の体羽の基調色は黒ですが、頭、頸は青紫色で、襟羽と胸は光沢のある紫青色で黒の斑点があります。


眼の周囲の裸出部は赤色ですが、此の面積を拡げると美しいです。腹は黒色で、大雨覆は黒色に幅広い白の縁どりがあり、此れが面白い縞になっています。


初列風切は褐色を帯びた黒羽で、腰羽は金属光沢の青色を帯びた黒です。16本の尾羽は黒に沢山の白の縞があって美しいです。


虹彩は赤褐色で、上嘴は黒ですが、下嘴や嘴の先は淡い黄色で、脚は黒灰色です。雌は黒とオリーブ褐色が基調ですが、寧ろ此の雌の方が立派で雄より観賞に値するといった人がありましたが、筆者も此の意見には同感で、雌が中々立派です。


全身はオリーブ褐色で白斑があり、全身の黒色斑点が顕著で、鳥体下部の方には大きい白い矢の形の斑点が走っており、胸の方では黒い縁とりがあります。


虹彩は褐色で、脚は雄と同様です。


台湾は日本の領土ではなく、従ってミカド雉も外国の学者は日本名をつけたのですが、日本の鳥でないのは残念ですが、我々には禽舎で此の鳥を増殖し、日本の何処か、台湾に似た地域を探して放鳥すれば、日本にミカド雉の自然棲息地を人工で作れるわけです。


此の鳥は初期に飼われたフランスのデラクール氏や、我が黒田長札氏等は、繁殖は容易であるといっておられるのですが、その後に飼育する多くの世界の人々にはミカド雉は飼育繁殖が難しく難飼の鳥の一つに数えられるに至りました。


此の鳥も良い両親を入手すれば繁殖は容易なのですが、普通動物商等のもたらすものは野外捕獲の荒鳥で、輸入直後、狭い箱飼いの後、売りに出るものですから、甚しく健康を損じ、良好な飼育場へ出しても遂に健康を回復せず死んでいくものが多いようです。


其の上、ミカド雉には尚次の点に難点があります。


其の第一は我ヤマドリと同様、雄が雌を禽舎内で殺すことです。平素割り合い仲良く見えても、一瞬の内に雄が雌をつつき殺すことがあります。


こういう鳥は飼育が困難となりますが、此れを防ぐにはヤマドリの処で記述しましたように、2坪位の禽舎を中央で仕切り、雄と雌を平素は別居で飼います。


中央仕切りに1つの扉を作っておきます。春になって産卵を開始しました夜に此の扉を開放しておきます。翌早朝には両者が合一して交尾をする筈です。


1回の交尾で1週間は大丈夫な有精卵を産みますから、以後扉を閉ざし、再び雌雄を分離して飼います。


以後1週間毎に此れを繰り返せば雌が殺される事なしに、有精卵をとる事が出来ます。


ミカド雉は産卵の早い鳥で、3月初め頃から産卵するでしょう。


卵は割り合い大きく、白色に近いのですが、僅か褐色を帯びています。卵の長短径及び目方は5.2cm x 3.7cm 41gです。


以上の様な、中央仕切りを入れないで、1つの禽舎で雌雄を同居で飼う場合は、棲り木を高くつけ、又竹やぶを禽舎内に作って雌の隠れ場を作っても或る程度は雄の攻撃を逃れる事は出来ます。


冬でも季節外れに暖かい日に雌が殺される事が多いですから、雌の隠れ場は年中設置しておかなければなりません。床面は砂地として湿気を出来るだけ避けなければなりません。


此の鳥は地面で産卵させた場合、産卵中に雄に攻撃される恐れがあり、巣箱を地面より高いところに設置した方が宜しい。英国のノーフォークにある雉保存所で約1mの高さに巣箱を設置しておきましたが、ミカド雉の雌は此の巣箱の中で産卵しました。


此の雉保存所で、1969年に此の方法で140羽のミカド雉の雛を採る事に成功しました。


餌はマッシュを与えますが、特に野菜を主食として、新鮮なものを多量に与えます。雛を育てる場合もやはり野菜を沢山与えるのが秘訣です。


繁殖期にはミルワームを与えると有精卵を確実にとれます。雛も最初の1週間はミルワームを与えるのが宜しい。又常識で解ることですが、新鮮な水を毎日与えることも大切です。


以上のような注意の下に飼育繁殖をすれば、ミカド雉もそう難しい鳥でなく、どんどん毎年雛をとる事が出来、然も長年産卵致します。


ミカド雉は一時台湾で乱獲され、日本へ沢山将来された事がありましたが、捕獲禁止令が出て、今は然程入手は容易ではありません。


なんとか、繁殖家の手で大量増殖し、此れを日本の鳥として日本にストックを作り、又山野へ放したいのですが、又、他方国際的な視野に立てば、日本のストックを台湾へ移入して、台湾での絶滅を救う事も亦重要な意義があることです。
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